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「赤とんぼ」の大合唱

 故人は八十歳のおじいちゃん。家族は長男ご夫婦と男のお孫さんが五人で、おばあちゃんは早くに先立たれ、同居のおじいちゃんがお孫さんの面倒をよく見ていたそうです。

 いつものように通夜後、明日の告別式の打合せをした後、「故人様に何かして差し上げたいことや、お棺に入れてあげたいものなどございましたら・・・」とうかがったところ、喪主ご夫婦が顔を見合わせて、うなずきながら「明日、『夕焼け小焼けの赤とんぼ』を、会場に流してほしいのですが」と話されました。
 その歌は「赤とんぼ」でした。喪主は題名をご存知なかったようで、いつも故人が口ずさんでいたとおりに言われた様子で、その馴染みの深さを感じることができました。
「はい、承知しました」とお返事をして社に戻りました。

 ところが「赤とんぼ」の歌が入ったCDが見つからないのです。
 スタッフはもちろん、知人にも聞いてみましたが、誰も持っていません。
「童謡の『赤とんぼ』ですよ、どうしてないの?」とレンタル店に電話をかけて問い合わせてみましたが、やはり見つかりません。
 告別式は明日の午前中。CDショップで購入する時間もない状態です。
「明日の朝、なんとかして購入して間に合わせます」という私の言葉に、「そこまではいいです」と喪主はあきらめられた様子でした。
 それでも、私は納得がいきません。
 何とかしたいと一晩中考えた末、私が行きついた結論は、「自分で歌おう!」でした。
 翌朝、控室にうかがい、その旨を喪主に申し出たところ、少し驚かれながらもすぐに真顔になり、「歌ってください。お願いします。」と言われました。
 私は、「できれば喪主様もご一緒に歌ってください」とお願いをして、式を進行しました。

 最期のお別れの時、棺に花を入れ、どのタイミングで・・・・・とすこしためらっていると、司会の方が、「歌ってあげるのでしょう?さぁ!」と私の背中を押してくれました。
 私が祭壇の前に出て、「歌わせていただきます」と歌い始めました。
「夕焼~け小焼け~の赤と~ん~ぼ~♪」
 震えるような私の声に、喪主の声が続きます。泣きじゃくりながらもしっかり歌声が聞こえます。
 すると、参列者からも声が聞こえてきました。周りを気にしていた歌声は、やがて大合唱へと変わっていきました。
 末っ子のお孫さんはせきを切ったように、泣きだされました。後でうかがったところ、末っ子のお孫さんは、よくおじいちゃんにおんぶしてもらい、その背中でいつも「赤とんぼ」を聴いていたそうです。そのときのことが思い出されたとのことでした。
「夕焼~け小焼け~の赤と~ん~ぼ~♪」
 この歌に送られ、おじいちゃんは天国へと旅立っていかれました。

48歳 女性 K・N (メモリアルスタッフが見た、感動の実話集『最期のセレモニー』より)

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