「修活」とは、残りの人生を考えることから始めよう

日本人の寿命はついに男女とも80歳代を迎え、人生100年時代と言われる超高齢化社会がすぐ目の前にきている。また今、年間140万人近い人が亡くなり、2030年には160万人を超すと言われる「多死社会」でもある。多くの人が死を意識しながら、延びた寿命を生きていくことになる。
人は「老いるほど豊かである」――そんな人生の修め方を提唱し続けてきた佐久間庸和社長に、人生100年時代のすばらしい「老い」の過ごし方を聞いた。

――佐久間社長は、常日頃から「人は老いるほど豊かになる」と言い続けておられますね。
佐久間 はい。老いはネガティブに取られがちですが、そんな意識を変えたいと思っています。仏教は「生老病死」の苦悩を説きました。そして今、人生100年時代を迎え、「老」と「死」の間が長くなっているといえます。
長くなった「老」の時間をいかに過ごすか、自分らしい時間を送るか――そのための活動が「修活」です。
「終活」という言葉がありますが、わたしは「終末」の代わりに「修生」、「終活」の代わりに「修活」という言葉を考えてみました。「修生」とは文字通り、「人生を修める」という意味です。
ぜひ「老い」をイメージしてみてください。たとえば「老」に起こることは次のようなことです。
①おっくうになる自分
外出がおっくうになる、家事がおろそかになるなどですが、それはふつうのことです。老化によって人は体力が衰えます。目の衰えに始まり、体の不調が増えます。嘆くことはありません。あなたが年をしっかりととっているという証です。
②認知症になる
物忘れが始まり、もしかすると認知症になるかもしれません。
こうしたことは、けっして特別なことではありません。「老」の時間の中では起こりうることです。「わたしはピンピンコロリで死ぬ」と願っても、そうなるかもしれないし、ならないかもしれません。希望することと備えることは違います。「ならない」と考えるより、「なったときにどうするか」を考えることが大切なのです。
③寝たきりになる
老化が進むと、病気になったり、転んだりして、寝たきりになることもあります。介護を受けることも十分に考えられます。

――そうした「老い」と向き合うことも「修活」ということですね。
佐久間 そうです。いま、世の中は大変な「終活ブーム」だといいます。
多くの高齢者が、生前から葬儀や墓の準備をしています。また、「終活」をテーマにしたセミナーやシンポジウムも花ざかりで、わたしも何度か出演させていただきました。
さらに、さまざまな雑誌が「終活」を特集しています。ついには「ソナエ」(産経新聞出版)のような終活専門誌まで発刊され、多くの読者を得ているようです。
その一方で、「終活なんておやめなさい」といった否定的な見方も出てきています。「終活」という言葉に違和感を抱いている方が多いということです。特に「終」の字が気に入らないという方に何人もお会いしました。
もともと「終活」という言葉は就職活動を意味する「就活」をもじったもので、「終末活動」の略語だとされています。ならば、わたしも「終末」という言葉には違和感を覚えてしまいます。なぜなら、「老い」の時間をどう過ごすかこそ、本来の終活であると思うからです。

――修活とは豊かな老後の作り方ということでしょうか?
佐久間 考えてみれば、「就活」も「婚活」も広い意味での「修活」ではないかと思います。
学生時代の自分を修めることが就活であり、独身時代の自分を修めることが婚活なのです。そして、人生の集大成としての「修生活動」があります。
わたしは、かつての日本は美しい国だったように思います。しかし、いまの日本人は「礼節」という美徳を置き去りにし、人間の尊厳や栄辱の何たるかも忘れているように思えます。
それは、戦後の日本人が「修業」「修養」「修身」「修学」という言葉で象徴される「修める」という覚悟を忘れてしまったからではないでしょうか。
わたしは一条真也というペンネームで『人生の修活ノート』(現代書林)というエンディングノートを作りました。そのノートを書くことで人生をしっかり修めてほしいのです。
老いない人間、死なない人間はいません。死とは、人生を卒業することであり、葬儀とは「人生の卒業式」にほかなりません。老い支度、死に支度をして自らの人生を修める……この覚悟が人生をアートのように美しくするのではないでしょうか。
さて、次に訪れるのが、「死」です。どのような死を迎えるのか。
誰にでも「老」の次には「死」がやってくるのです。
死を考えないのではなく、ぜひ「死の準備」をしましょう。
◦葬儀を考える
自分はどんな葬儀をしてほしいのか。これも終活の重要なポイントです。
◦死んだ後を考える
最後は、自分が死んだ後のことを考えます。「老」の時間の中で、「死」までを考えることこそ「終活」です。それを含んで修活です。

――終活の本質とは修活であるということがよくわかりました。
佐久間 残りの人生をしっかり考えること――つまり自分らしくいかに生きるかを考えることこそが、修活なのだと思いますよ。

――今日はありがとうございました。